リフィル処方箋とは?メリットやデメリットについても考察!

2022年の診療報酬改定において、新しく処方箋の様式が見直され、リフィル処方箋が導入されることとなりました。リフィル処方箋は数年前から導入が検討されていましたが、その度に頓挫されることとなってきました。
しかし、新型コロナウイルス対策による医療体制の見直しや、医療財源の確保に後押しを受ける形で、ついにリフィル処方箋の運用が決定しました。
これから始まるリフィル処方箋について、そのメリットやデメリット、扱う薬剤師に期待されることについて解説していきます。

この記事では、下記の読者に情報発信できたら幸いです。

・リフィル処方箋のメリットとデメリットについて知りたい方。
・リフィル処方箋による薬剤師の役割や責任の変化を知りたい方。
・2022年の診療報酬改定において、薬剤師の活躍が期待されるリフィル処方箋制度について知りたい人へ

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目次:リフィル処方箋とは?メリットやデメリットについても考察!

1,リフィル処方箋とは

2,海外におけるリフィル制度とは

3,リフィル処方箋と分割調剤の違い

4,リフィル処方箋の利用での薬剤師の役割や責任とは

5,リフィル処方箋のメリットとデメリットとは。

6,まとめ

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1 リフィル処方箋とは

リフィル(refill)とは詰め替えを意味します。つまり、1本のボールペンの芯を詰め替えて繰り返し使うように、1枚の処方箋で繰り返し薬を貰うことができるのがリフィル処方箋です

◇基本的な考え方
症状が安定している患者さんに対して、医師と薬剤師の適切な連携のもと、同じ処方箋を一定期間反復利用できる仕組みです。

◇具体的な内容
医師がリフィルによる処方が可能と判断した場合に、処方箋の「リフィル可」欄にレ点チェックをします。
そのリフィル処方箋は3回までを上限として、反復して使用することができます。つまり、一度受診してリフィル処方箋が発行されれば、その後は最大2回まで医師の診察を受けずに薬局でリフィル処方箋に基づいて調剤してもらえます。
処方日数に制限はなく、医師が医学的に適当と判断した日数を処方することができます。もちろん、リフィル処方箋を受け取った薬剤師は、患者さんの服薬状況等を考慮し、調剤することが不適切と判断した場合は、処方医に連絡しなければいけません。

◇注意点
・投薬量に制限のある薬、湿布薬はリフィル処方箋による投薬はできません。   
例:新薬、麻薬、向精神薬等の処方日数制限がある薬
・リフィル処方箋による1回目の調剤を行うことが可能な期間は、通常の処方箋の場合と同様、発行日を含め4日間です。2回目以降の調剤については、原則、前回の調剤日を起点とし、当該調剤に係る投薬期間を経過する日を次回調剤予定日とし、その前後7日以内です。そして患者さんに次回来局日を確認し、予約日を過ぎても来局しない場合は、電話等でフォローしなければいけません。
・基本的には継続した薬学管理の観点から、リフィル処方箋は初回から全て同一の薬局で対応することが望ましいという事を、患者さんに説明しなければいけません。もし、患者さんが他の薬局で調剤を受けることを希望する時は、あらかじめ必要な情報を当該薬局に提供しなければいけません。

2 海外におけるリフィル制度とは

リフィル処方箋という制度は決して新しい概念ではありません。


海外では、リフィル処方箋は既に導入されています。イギリス、フランス、アメリカ(州ごとによって異なる)、オーストラリア、カナダ等が既にリフィル処方箋を導入している国です。
その中でもアメリカはなんと1951年から既にリフィル処方箋が導入されています。更に対象患者が他の国は慢性疾患患者や経口避妊薬を対象とする中、アメリカは特に規制はありません。
各国のリフィル処方箋の有効期限は半年以上の場合がほとんどです。更にフランスでは慢性治療(避妊薬、心血管疾患、ホルモン治療及び糖尿病薬)については、リフィル処方箋の期限が過ぎた場合、継続服用が必要な患者であれば薬剤師が追加で薬剤を出すことが可能です。


リフィル処方箋が導入されている諸外国では、薬剤師の判断に任せられている部分が多いと感じます。医療先進国では薬剤に関する対物業務と対人業務を分け、薬剤師はより高い薬学の専門性を発揮できる環境にあります。薬剤師の評価や信頼の高さが、リフィル処方箋にも表れているのではないでしょうか。

3 リフィル処方箋と分割調剤の違い

リフィル処方箋と少し似た制度に、分割調剤というものがあります。リフィル処方箋と分割調剤の違いについてご説明します。

◇分割調剤とは
分割調剤は、薬局において長期保存が困難な薬や、後発医薬品を初めて使用する場合、または服薬管理が難しい等の理由で医師の指示によって、処方された日数を短く刻んで調剤することができる制度です。例えば90日分の処方を30日分ずつ、3回に分けて調剤することが可能です。
長期保存が困難な薬や、後発医薬品を初めて使用する場合は特に医師へ報告義務はありません。しかし、医師の指示による分割調剤では、2回目以降の調剤時は患者さんの服薬状況を処方医に報告する義務が発生します。

◇分割調剤のデメリットと現状
分割調剤は処方箋の様式が煩雑であることや、報告義務が付随することから、なかなか普及しませんでした。また、医師が分割調剤の必要性を感じないという意見が多くあります。
しかし薬局の現場では、分割調剤の指示が無くてもコンプライアンスが悪い患者さんを支援するために色々と手を尽くしています。例えば長期処方された薬を、薬剤師が2週間分ずつカレンダーにセットし、残りの日数分は薬局で預かっておくという対応をとっている場合があります。
これがリフィル処方箋なら、処方医は2週間分の処方とレ点を付けるだけで無償で行っていたこれらの業務に診療報酬の点数を算定することができます。

◇リフィル処方箋との違い
リフィル処方箋は医師の手間が少なく、かつ薬剤師も特に問題がなければ報告義務はありません。手続きが煩雑である分割調剤の指示を医師に打診するのはハードルが高い、また分割調剤のルールが実情に即していないと感じている薬剤師は多いのではないでしょうか。そういった状況が、リフィル処方箋導入により変化する可能性があります。
しかし分割調剤とリフィル処方箋では、薬剤師の責任の大きさが変わると筆者は考えます。コンプライアンス状況をメインで確認していた分割調剤と違い、リフィル処方箋は継続の可否から薬剤師も責任を持って判断しなければいけません。リフィル処方箋は処方医と薬剤師の責任の所在が度々話題になりますが、薬剤師が複合的に患者さんの状態を診る必要があるのは間違いありません。

4 リフィル処方箋の利用での薬剤師の役割や責任とは

リフィル処方箋を取り扱う薬剤師の役割や責任とはどう変化するのか考察してみました。

◇薬剤師の責任
リフィル処方箋が導入されることにより、薬剤師の責任は大きく変わります。当たり前ですが今までは、処方箋が発行される際に医師の診察が必要でした。その上で医師が処方内容を判断し、薬剤師はダブルチェックをする役割を担い、患者さんに薬を渡していました。しかしリフィル処方箋では、患者さんの手元に薬が届くまで、医療者は薬剤師しか関与しません。今までより薬剤師の責任が大きくなるのは当然のことです。

◇薬剤師の役割
では、薬剤師の役割も大きく変わるのでしょうか。決してそうとは言えません。患者さんの治療を、点ではなく線としてとらえる必要性は高くなりますが、それは多くの薬剤師は日常的に実践していることでしょう。
何も急に聴診器を使って患者さんを診察しなければいけないことはありません。バイタルサインの確認というのは、薬剤師にとっても必要となっていくスキルの1つですが、では現状それができなければ患者さんに良い薬学的管理を提供できないのでしょうか。答えはNOです。
薬剤師として副作用、効果、服薬状況等を評価し、何か問題があれば医師と連携するという当たり前のことを行えば、薬剤師の責務は果たされると考えます。

◇考察
医師もリフィル処方箋の運用開始時は、適応となる患者さんをかなり慎重に選ぶはずです。医師も薬剤師も患者さんも最初は手探り状態なのです。薬剤師としてす今持てる能力を発揮し、医師とともに経験を積んでいけば患者さんに安全な医療を提供することができます。


リフィル処方箋で出された薬によって副作用や体調悪化が起きた場合、責任の所在は処方医か薬剤師どちらになるか、という論争はそもそも医師と薬剤師の関係性ができていないから起こると考えます。運用するにあたって取り決めを作ったり、困った時に相談できる関係性を準備しておけば、そういったトラブルは防げるでしょう。

結論を言うと、薬剤師として患者さんの健康を薬学的な観点から支えるという役割は変わりません。一方、医師の診察を通らない分、薬剤師の判断にかかる責任は重くなります。しかし薬剤師として誠意を持って対応し、医師と信頼関係を構築できていれば慎重になりすぎることはありません。

5 リフィル処方箋のメリットとデメリットとは。

リフィル処方箋のメリットとデメリットについてご紹介します。

◇メリット
・患者さんの負担を軽減できる
これが患者さんにとって、リフィル処方箋の最たるメリットでしょう。診察を受けるのに病院で長時間待ち、更に薬局でも待ち、いつもの薬を貰うことを負担に感じる患者さんは多くいます。また、昨今では新型コロナウイルスの感染を懸念し、病院へ行きにくいと考える患者さんもいることでしょう。また、まれに「今日は薬だけもらいに来た」と、未受診で発行された処方箋を持って来局される患者さんもいます。これはもちろん違法ですし、処方箋を発行するためだけに患者さんが受診料を払っている現状は容認できません。
リフィル処方箋ならそういった問題を解決できます。

・医師や病院の負担を軽減できる
リフィル処方箋に対して懸念を示す医師が多いのも事実ですが、医師にとってメリットもあります。状態が安定し、投薬だけ必要な患者さんの診察時間を削減することで、より医師にしかできない業務に力を入れることができます。少子高齢化に伴い、今後ますます医療を必要とする人は増えていきます。しかし医師の数には限りがあり、タスク・シフトの重要性が呼びかけられています。
また、受診者を減らすことによって病院の待ち時間を削減し、従来そこに割いていたスペースや人員を有効活用できるようになります。より必要な人やモノに時間や労力をかけられるのは、医療機関の機能を明確にし、健全な医療体制を整えることにつながります。

・医療費を削減できる
リフィル処方箋を導入することで、国費ベースで約0.1%(約135億円)の医療費削減が見込まれます。少子高齢化社会という大きな問題を抱える日本において、医療費削減と医療資源の有効活用は急務の問題です。リフィル処方箋はその2つを解決する手だてとして期待されています。受診回数を減らすことによる医療費削減はもちろんのこと、残薬を減らすという点においてもリフィル処方箋は有用です。日本では年間500億円もの残薬が発生していると言われています。薬剤師が患者さんの服薬状況を頻回に確認できるリフィル処方箋の制度は、この残薬問題解決の糸口となるでしょう。

・薬剤師と患者さんのコミュニケーションが増える
従来の受診後に薬局へ処方箋を持って調剤を受けるという流れでは、患者さんは薬局に来る頃には待ち時間で疲れ果てている事がよくあります。更に「医師に伝えたことを、なぜ薬剤師にもう一度言わないといけないのか」と会話に応じてもらえない事もあります。しかし、リフィル処方箋なら診察がないので、患者さんも薬剤師としっかりやり取りをしてくれるでしょう。体調の変化や相談に、真摯に応対することで、これまで以上に患者さんと信頼関係を築くことができます。

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・かかりつけ薬局が促進される
今まで受診した医療機関の門前の薬局を利用していた人も、受診無しで薬を調剤してもらえるなら家の近くの薬局の方が利便性が高いと考えるでしょう。また、継続した薬学的管理を促すために、リフィル処方箋は同一の薬局で調剤を受けることが推奨されています。
これらの理由から、リフィル処方箋導入により、かかりつけ薬局は促進されると考えます。門前から地域の薬局へという流れはより加速していくことでしょう。

・薬剤師の評価を高めるチャンス
今まで処方権の侵害などとして、医師会などから反対を受けて実現してこなかったリフィル処方箋が、ついに運用されることとなりました。もちろん医師の判断、医師の処方の範疇にあることは間違いありませんが、リフィル処方箋は薬剤師の存在価値を高めるきっかけとなるでしょう。
継続処方について、今まで「今さっき医師が診察して出された薬なのだから必要に決まっている」と、疑問にすら感じてこなかった薬剤師も多いと思います。これからはリフィル処方箋を受け取る毎に、患者さんにとって適切な処方内容であるか、今一度立ち止まって考える必要があります。問題点を見つけるところから、薬剤師の評価が変わるチャンスがはじまります。リフィル処方箋導入を、薬剤師の更なる活躍の追い風として、ぜひ現場で成果を上げていただきたいと思います。

◇デメリット
・患者さんとのトラブルが予想される
薬剤師をしていると、「医師に処方箋をもらわないと処方薬を受け取ることができない」ことを理解できていない人を一度は見たことがあるのではないでしょうか。突然手ぶらで来局されたり、家族から「これって受診しないともらえない薬なの?」と聞かれた経験がある方は多いのではないでしょうか。
患者さんの理解度は、医療者が思っているより低いことがほとんどです。医師がリフィル処方箋を使用できる患者さんであると判断しても、実際はよく理解していない方や、時間が経つと忘れてしまう方も出てくるでしょう。リフィル処方箋を失くした、次回調剤予定日から大幅にずれての来局、処方量制限のある薬を要求される等、トラブルが起きる要因はたくさんあります。起こりうるトラブルを想定し、医師を含めて対応策を協議していく必要があります。

・薬剤師の負担が増える
受け取ったリフィル処方箋を本当に継続して投薬して良いのか、判断は薬剤師に委ねられています。症状が安定していると診断された患者さんといえど、次回来局まで何も変化がないとは限りません。症状の悪化や改善、他の医療機関にかかりはじめた等、患者さんの変化をしっかり確認し、必要に応じて医師に連絡する責務があります。この責任を負担に感じる薬剤師もいるかもしれません。
また、次回来局予定日を過ぎても薬を取りに来ない患者さんについては、電話で確認するなどフォローが必要です。今までにない業務が加わることになり、負担に感じることがあるかもしれません。

不要な薬も漫然と投与される可能性がある
医師の診察無く、薬を受け取れるリフィル処方箋は、不要な薬剤を長期投与される可能性があります。薬によっては、症状が改善されたり、一定期間服用しても効果がない場合は中止・変更を検討すべきです。リフィル処方箋はそういった処方の見直しをする機会を減らす可能性があります。
そこは薬剤師として、患者さんの状況を確認し、不要な薬は極力減らす方向に考えていきたいものです。そのためには、医師との関係作りは欠かせません。確かにリフィル処方箋が使える3回以内に薬の変更を提案するのは難しいかもしれません。しかし医師が診ていない間に患者さんの状況を最も把握していたのは薬剤師です。薬学的根拠を持って医師へ情報提供をすれば、次回処方時に医師が処方を見直すきっかけとなるかもしれません。

6 まとめ

リフィル処方箋は、薬剤師の職能を大いに発揮できる制度です。だからこそ、消極的に処方箋を受け取って調剤するだけで終わってはいけません。医師と連携を密に取り、患者さんの利益を第一に考え、質の高い薬学的管理を提供する必要があります。今回の診療報酬改定は、薬剤師の飛躍の大きなチャンスです。医師の指示通り調剤をすれば良い時代は終わりました。これからは、患者さんと地域で最も距離の近い医療従事者として、薬剤師の活躍の場を拡げていってもらえたらと思います。この記事を読んでくださった薬剤師さんの更なるご活躍を願っています。

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